【読書】古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

「書こう」



20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

著者は言う。
書くこととは、あたまのなかの「ぐるぐる」を翻訳することだ、と。
書くこととは、思考のメソッドであり、書くこととは、自分なりの「解」をつかむためなのだと。


本書はあたまのなかにある「ぐるぐる」―「思い」や「主張」―をどう形にし、文章に表現するかのテクニックを解説したものだ。内容は私が要約などするより、実際に目次をぺらぺらめくっていただいた方がいいと思うが、ここでは本書を読みながらひとつ思ったことを書く。

仮説&検証・起"転"承結と学術論文

本書に書かれていることは、学術論文(とそれを書くための訓練としてのレポート)の執筆ともつながると感じた*1

それを感じたのは「第3講 読者の椅子に座る」で紹介されているテクニック(の一部)

  • "仮説&検証"で読者をプレーヤーにする
  • 読者を巻き込む「起"転"承結」

の部分だ。

前者は、文中に書き手独自の仮説を提示し、読者と一緒に名手その仮説の検証を行うという書き方をとることによって、読者を「議論のテーブル」につかせる効果を狙うものだ(p. 190-)。

後者は、「起承転結」の"転"の位置を変え、一般論の後にそれを否定する意見を配置することで読者の興味を引く、というものである(p. 191-)。


これはまさしく学術論文の書き方だ。学術論文はある主張をするために、ある主張の正当性を示すために書かれる。ある仮説を提示し、その正当性を論理的に示すことが求められる。Research Questionをものすごくキャッチーな、ポップなものにはしにくいだろうが、それでもその前段階としてのReviewを通じて、そのRQがいかに重要なのかを示す必要性はある。

後者の「起"転"承結」もまさに論文の組み立て方のそれだ。
序論・Review(「起」)からこれまで研究されていなかった新たなRQを導入し(「転」)、実験などでそれを実証しにかかり(「承」)、議論・結論でまとめあげる(「結」)。


このように考えると、大学生が大学での学修の集大成として卒業論文を書く目的の一つがここにあると思う。
論文を読み、書く中で「起"転"承結」の型を学び、そして仕事や卒業後の生活をしていく中で求められる文章力の基礎を固める。学術論文は決して「シャカイジンになってからは関係ないのタイプ」の文章ではない。

*1:学術論文も「文章」なので当然と言えば当然だが。