【読書】 『ジムに通う前に読む本 スポーツ科学からみたトレーニング』

読んだ。書名のとおり、ジムに行く前に読んどくといいかなと思った(特に前半)。


ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング (ブルーバックス)

ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング (ブルーバックス)


運動科学理論に基づいた運動を!

私は週1回のペースでジムに通っている。ただその運動は「自己流」で、個々の運動に特別根拠があるわけではなかった。それほど強く筋力・体力アップを望んでいるわけでもないのでまあいいか、とやってきたが、せっかく時間とお金をかけるならトレーニングに関する最低限の知識はあってもいいだろう、と思い本書を購入した。

本書の著者ははスポーツジムでのトレーナー経験もあり、現在は大学に籍を置いて運動科学研究者として研究している桜井静香さん*1。内容を一言で言えば、「運動科学理論に基づいた運動をしましょう!」ということで運動・スポーツ科学を軸に、ジムに行く前に知っておくべき運動の効果・運動の方法等を紹介している。前半がとりわけ理論的な側面の紹介で、運動すると体がどう変化するのか、その変化はなぜ起こるのか、変化を効果的に引き起こすにはどうすればいいのか*2、等々を解説する。後半は実践的なジム運動の紹介となっていて、自宅で手軽にできるエクササイズや、ジムにある器具を使ったトレーニング方法の解説がなされている。



ブルーバックスという紙面が限られた中での実践紹介は正直「紹介」以上のものではないと感じるのだが、前半(1~5章)の理論紹介は知っておくと運動に対する意識が変わるし、モチベーションになるなと思う部分がいくつかあったので、紹介する。


脳なくして運動の成立はなし!

「トレーニング」というと、「筋肉鍛えるぞ!どの筋肉鍛えるのか?どのくらいの強度で行えばいいのか?」というように、複雑かつ複合的な運動動作を分解し、個別要素のみを考えがちだが、筆者はそこに「落とし穴」があるという。

筋肉が力を出すには、脳から脊髄、運動ニューロンを媒介にして筋肉へ、という「伝達プロセス」が必要です
(p. 37)


筋肉と神経は基本的につながっていて、この伝達プロセスのことを「神経-筋協調性」というそうだ。この神経と筋肉のつながりは必ずしも一対一ではなく、そのため運動やスポーツスキルの向上を図る場合、この「神経ー筋協調性」の向上、つまり

「集団的」に「複合的」に「脳が機能される」状況が必要
(p. 38)

となる。運動能力の(全体的な)向上には、単なる筋力トレーニングではなく、エアロビクスや複雑な動きを取り入れたスタジオトレーニングなども必要となるようだ。また、複雑な運動スキルなどを「体で覚える」などとよく言うが、この神経ー筋協調性から言えば、体で覚えるというのは「神経ー筋協調性を癖付けする」ことといえるのではないか。

運動で骨を鍛える

筋力トレーニングは筋肉を鍛えるもので骨は一見関係なさそうであるがどうもそうではないらしい。
ウェイトトレーニングにより大きな力を発揮する際、重力に対する強いメカにカルストレスが骨に対してプラスの影響を与えるのだそうだ*3

筋肉は脂肪に変わらない

私は長年、運動しないと「筋肉が脂肪に変わる」と思っていたのだがこれは間違いだった。

筋肉と脂肪を構成する細胞組織はそれぞれ全く「別物」です、ですから、筋肉が脂肪に「直接変化」することはありません
(p. 156)

運動習慣がなくなったため筋力は細り、今までと同じエネルギーを摂取していても余剰エネルギーが発生し、その余剰エネルギーが脂肪に変化することで、「見た目的に」筋肉が脂肪に変わっているような状況になるだけ、ということだ。


ジムに通う前にさらっと読みましょう

本書の優れている(と私が思う)点は

  • 運動科学理論について、運動・スポーツ科学の研究結果をひきながら、まったくの素人にもわかりやすく、かつ説得力のある論を展開してる
  • 自分の部屋ですらできる、ちょっとした運動実践の例もあるので、本書を参考にすぐ運動を始められる(ただし後半多くのページ数をさいている割にはそれほど厳密かつ詳細に書かれているわけではないので、これは他の専門書を参照した方がいい)
  • 簡易ながら索引が付いている!ココ重要!*4


といったところか。専門的な内容を扱っているが、読みやすくまとまっているし、気になる箇所をつまみ読みができる章立てになっている。まさしく「ジムに通う前に」ちょこっと読んでみて、損はしない。

*1:どうやら現在は北海道大学にて非常勤講師として教鞭を執ってらっしゃるらしい[http://t-s-shizuka.info/profile.html]:title

*2:有名どころで言うと「筋力トレーニング→有酸素的な運動」の順番が脂肪燃焼に効果的、など

*3:影響があるのが骨密度で、実際ボディビルダーの骨密度は値が大きいようだ

*4:私、索引好きです