【読書】「外国語よりも日本語!」に対する回答はこちら→/三森ゆりか 『外国語を身につけるための日本語レッスン』

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外国語を身につけるための日本語レッスン

外国語を身につけるための日本語レッスン

「小学校での英語教育」議論の文脈などで「外国語よりもまず日本語(国語)!」という反対意見をたまに目にするが*1、ではその「日本語(国語)」とはいったいなんなのか、どのようにして日本語の能力を高めていくのか、という肝心なところが抜けている議論が多いと感じていた。



本書は、

母語である日本語でどのようなことを学習すれば外国語を理解しやすくなるのか、そうした疑問に応えよう
(本書、p.209)

としたものであり、「言語技術教育」をその回答としている。

本書に書かれていることを実践するのは非常に大変だが、本書自体はとても読みやすい。最近大人向けに大学生・社会人のための言語技術トレーニングという本が出たが、こちらはよりアカデミックな装いもあり取っつきにくいので、三森初心者は本書
外国語を身につけるための日本語レッスン外国語で発想するための日本語レッスンがおすすめ*2

アメリカ、どうだった?

外国語を身につけるための日本語レッスン外国語で発想するための日本語レッスンについてはid:NEXT49さんが言語技術は重要 - 発声練習http://d.hatena.ne.jp/next49/20070724/p1といったあたりで書いてらっしゃるのでそちらを参照。

ここではものすごくどうでもいいことを書く。

外国語を身につけるための日本語レッスンの第三章「「対話」の技術」にこんな話が書かれている。

「アメリカ行ってきたんだって?それでどうだった?」という質問を講座の参加者に投げかけると、多様な答えが返ってきた(アメリカの印象を述べる人、誰といったという話をする人、食事の話をする人、訪れた場所の話をする人・・・)。こういう曖昧な質問をやめて、5W1Hを意識しながら具体的な質問をするべき。
そうすることによって自分がほしい返答が帰ってくるし、相手も何を答えればいいか迷うことがない。

ということだそうだ。まあ確かにまったくもってそのとおりだが、私はなんとなく違和感を感じた。
私もよく「~したんだ-、で、どんな感じだった?」などという質問をすることがあるが、「自分がほしかった返事が返ってこないむきー!」となったことも相手が返答に困っているようなこともあまり経験がない。むしろこういった曖昧質問の方法は、使い勝手がいいとすら思っている。

なぜか。
と考え、「あぁ、自分が「~はどうだった?」と曖昧に質問するときは、そもそも相手の話に興味がないけど、でも何か質問しなきゃまずいなー相手しゃべりたそうだしなー、と思うときなんだ」ということに気づいた。

私だって興味のある人の話であれば「アメリカ?どこ行ったの?いついったの?だれといったの?天気はどうだった?どこがいちばん印象に残った?食べ物で何がいちばんおいしかった?」と訊くだろう。しかし、「私アメリカ行ってきたの!ねえ私の話聞いてえええぇええぇ!!」みたいなオーラが出ている人(かつその話に対して興味が持てない)の場合、「で、どうだった?」という曖昧な質問をするのがよい。なぜなら、自分も楽だし、訊かれた方も返答に制限がない方が好きな話ができてよいからだ(で、あとはうんうん、と聞いていればいい)。

そういうわけで、「で、どうだった?」型の質問は、相手との会話のテンポを損なうことなく、しかし退屈な話をやりすごすためにはいいテクニックなんだと思った。これもまた、意識して使いこなせば言語技術だろう←


外国語で発想するための日本語レッスン

外国語で発想するための日本語レッスン

大学生・社会人のための言語技術トレーニング

大学生・社会人のための言語技術トレーニング

*1:そして続くのは「日本語の美しさがー」であったり「日本人としての心がー」であったりするため「外国語よりもまず国語!」となった時点であーっとおもうのだが

*2:ただし、三森さんの本は「読めば言語技術が身につく!」という類いのものではない。言語技術とはなにか、どのようなトレーニングを重ねていけば言語技術を育成することができるか、という理論書としての側面が強いかもしれない