「国際化」の目的
メモランダム的ブログエントリ。
日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫)を読んでいて、こんな記述があった。
学生に「国際化」という言葉をキー・ワードにして、一種の「連想ゲーム」をやってもらい、思いつくことをどんどん出してもらった。(中略)そこで「このリストを、国際化の手段と考えられるものと、国際化の目的と考えられるものに分類して下さい」という問いを出してみた。すると、おもしろいことに、出てきた項目は全部「手段」のグループにはいることがわかった。「目的」に属するものは、ひとつもない。(中略)ここに、鳴り物いりで展開されている国際化論の根本問題がある
(日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫)、p. 41)
本書は初版1982年、ちくま学芸文庫の新版(?)は1995年だ。この当時「根本問題」とされていた国際化の目的については、今日でも曖昧なままであろう。しかし当時と状況が違うのは(というより当時からあった状況がより強化されているというべきか)、今日は世の中が「グローバル化」しているので、人もシステムも「国際化/グローバル化しなければ!やばい!」というロジック(?)が押し通せるようになっていることだ。
もはや「国際化の目的」などいらない。我々は目的など考えている暇があったら、国際化/グローバル化しないといけないのだ、そうしないと世界から取り残されるのだ。むしろそういった脅迫的な感情が、目的になっている。
もう「国際化の目的」を問い直す機会は訪れないのかもしれない、とおもった。
- 作者: 杉本良夫,ロス・マオア
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/01
- メディア: 文庫
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