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かなぐり・・・「捨てる」だけ?

先日友人と話していて、こんな話になった。

「かなぐり捨てる」の「かなぐり」は「捨てる」にしか接続しない。


それを聞いて、あー確かにそうかも。おもしろいねーなどと話してた。

さて、ほんとに「かなぐり捨てる」の「かなぐり」は「捨てる」にしか接続しないのか、調べてみた。

ググる

教えて!Google先生! 「かなぐり捨てる」で検索

するとこんな記事が。

「かなぐり捨てる」の「かなぐり」とはなんなのでしょうか? - Yahoo!知恵袋

古語に「かなぐる」という動詞があります。
これは「掻き殴る(かきなぐる)」が変化したもので、「荒々しく払いのける」「乱暴にふるまう」といった意味です。
そこから「乱暴に放り出す」という意味の複合語「かなぐり捨つ」が生まれ、そのまま現代語に変化して「かなぐり捨てる」になりました。
「かなぐり捨てる」の「かなぐり」とはなんなのでしょうか? - Yahoo!知恵袋


なるほど、「掻き殴る(かきなぐる)」が変化した「かなぐる」という動詞が(古語には)あるのか。
ではでは「かなぐる」を調べればいろいろわかっちゃいそうだね。

JKで調べる

はいでたーJK

※JK=Japan Knowledge

図書館に行って、「かなぐる」をJKで見出し語検索(といっても以下、日本国語大辞典からしか引いてないけど)。


ちょっと長いけど、おもしろいから引用。太字はこたろうです。

(1)荒々しく払いのける
*落窪〔10C後〕一「『いと愛敬なかりける心もたりける物かな』とて、腹だちかなぐりて起くれば、帯刀笑ふ」
(用例一部省略)

(2)荒々しく引きぬく。また、乱暴に奪いとる。ひったくる。
*今昔〔1120頃か〕二九・一八「其の死人の枕上に居て、死人の髪をかなぐり抜き取る也けり」
(用例一部省略)

【語誌】
(1)現代語では、単独の用法はなく、「かなぐり捨てる」と複合形で用いるのが常である。
(2)古典語では、単独に用いるだけでなく、「捨つ」のほかにも、「落とす」「散らす」「取る」「抜く」などと複合する形もあって、荒々しく乱暴にこれらの行為を行なう意を表わしている点では、現代の用法と相違はない。ただ、古典語では、「かなぐり付く」「かなぐり見る」のような、離脱とは反対の、接着する行為と関わる用法もある。これが本来的なものなのか、単に行為のはげしさに注目した転用なのかは明らかではない。

【方言】
(1)荒々しく奪いとる。ひったくる。《かなぐる》仙台†058《がなぐる》山形県山形市・北村山郡139
(2)ひっかく。かきむしる。《かなぐる》土佐†025山梨県南巨摩郡463鳥取県西伯郡719岡山県709762763広島県倉橋島054佐伯郡771徳島県810香川県829愛媛県845高知市050《かぐる》備後†124島根県725岡山県苫田郡748広島県比婆郡774高田郡779山口県792香川県小豆島829《かぐしる》島根県邇摩郡725隠岐島741山口県阿武郡796
(3)田の草取りをする。《かぐる》島根県仁多郡725
(4)殴る。《かなぐる》新潟県東蒲原郡368
(5)登ろうとしてすがりつく。よじる。《かぐる・かぐしる》山口県阿武郡796
(6)(「書きなぐる」か) 筆の勢いに任せて書く。殴り書きにする。《かぐる》とも。備後†124

【語源説】
(1)カキナグル(掻殴)の略〔大言海〕。
(2)カキナゲ(掻投)の義か〔俚言集覧〕。
(3)カヒナナグル(肘抛)の中略〔俗語考〕。
(4)カマナグル(鎌投)の義〔紫門和語類集〕。
(5)カイノクル(掻退)の義〔言元梯〕。
(6)クサナヤ(草無)の反。また、カムナクル(髪無繰)の義〔名語記〕。

”かなぐ・る”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)


なるほどー。「かきなぐる」は確かに語源の一説ではあるが、そのほかにもいろいろな語源説があるのね。
でもって、現代語ではもっぱら「かなぐり捨てる」だけど、古語にはかなり派生用例があるようだ。



では、今度は「かなぐり○○」の用例を実際に検索してみる。

  • かなぐり落とす

荒々しく落とす。乱暴に引きずり落とす。
*竹取〔9C末~10C初〕「御迎へに来ん人をば長き爪して眼をつかみつぶさん、さが髪をとりてかなぐり落さん」

”かなぐり‐おと・す【─落】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

ちなみに「かなぐり落ち」という名詞形も存在したようだ。

  • かなぐり抜く

手荒く引き抜く。むしり抜く。
*浄瑠璃・源平布引滝〔1749〕二「ずんど立て縁先の元に植たる小松の一本かなぐり抜(ヌキ)」

”かなぐり‐ぬ・く【─抜】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

  • かなぐり見る

険しい視線をなげる。にらみつける。
*歌舞伎・盟三五大切〔1825〕序幕「『一二年(かせ)いでくれろと言ったぢゃアねえか』トかなぐり見て」

”かなぐり‐・みる【─見】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

ほえーこんなのもあるのか。

  • かなぐり付く

がむしゃらにしがみつく。
*曾我物語〔南北朝頃〕九・五郎めしとらるる事「其外の人人『余すな、漏すな』とて、かなぐりつく」

”かなぐり‐つ・く【─付】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

最後のふたつはそのほかの「離脱」という感覚からするとちょっと変だけど、「はげしく引き離す」のはげしさが、まったく逆方向に向いた結果のことばなのかな。



ちなみに「かなぐる」の記述にもあったように、「かなぐり○○」というタイプだけではなく、「打ちかなぐる」・「くいかなぐる」など、「○○かなぐる」という表現もあるようだ。

  • 打ちかなぐる

荒々しく打つ。うちのめす。
*宇津保〔970~999頃〕蔵開中「うちの上をも、こなたの上をも、うちかなぐりたてまつり給つつ」

”うち‐かなぐ・る【打─】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

  • 食いかなぐる

食べ散らかす。食い荒らす。
*源氏〔1001~14頃〕横笛「いとあわたたしう取り散らして、くひかなぐりなどし給へば」

”くい‐かなぐ・る[くひ:]【食─】”, 日本国語大辞典, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>, (参照 2014-02-02)

これらも「はげしさ」・「乱暴さ」というイメージで使われている。

かなぐり・・・捨てるだけじゃなかった!!

現代では「かなぐり」は「かなぐり捨てる」という形でしか、(ほとんど)お目にかかることはない。その意味では冒頭の友人の言葉(「かなぐり」は「捨てる」にしか接続しない)はだいたい正しい。しかし古語(?)の中では、「かなぐり」/「かなぐる」はいろんなかたちで活躍していたことがわかった。

そしてその用例は結構おもしろくかつ味わい深く、私も日常生活で使ってみたくなるモノだった。


「捨てる!」快適生活 (知的生きかた文庫)

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