【読んだ】憲法記念日に/『政府の憲法解釈』

安倍首相は政府の憲法(9条)解釈変更による「集団的自衛権」の行使実現をめざしている。


連立を組む公明党および自民党内からも慎重論がでているようだが、安倍首相としてはいつ解釈変更するの?「いまでしょ!!!」という勢いで、今後変更を実現させようとするはずだ。

さて、安倍首相が変更しようとしている「従来の9条政府解釈」とはいったいどんなものか。それを知るための本がこれだ。

政府の憲法解釈

政府の憲法解釈

「集団的自衛権」の解釈変更議論に立ち向かうために

本書は、政府の憲法解釈がどのようなもので、それについての議論がどのように行われてきたかを国会での答弁に関する豊富な資料をもとに示そうとする。
ふたつの章立てで構成されており、ひとつが「第Ⅰ章 戦争の放棄」および「第Ⅱ章 統治構造」である。
集団的自衛権についての議論が盛んに行われている今、とくに第Ⅰ章については一読しておく価値がある。

安倍首相の解釈変更が「国会での議論を軽視している」として批判されることがある。本書が示す国会での長年の議論の積み重ねをみると、たしかに解釈の変更を閣議決定し、国会での議論は関連法案審議の過程で、というのは強引すぎるということがわかる。

同時に、複雑であると思われがちが政府の憲法(9条)解釈が、わりと単純であることもまたわかる。
すなわち政府の9条解釈とは「わが国は個別的自衛権を持ち、自衛隊は合憲である」・「集団的自衛権に関しては、国際法上保持することは明らかだが、憲法上行使不可である」というものだ。

まあ、その解釈を正当だとする論拠のところで、いろいろな話がでてきて、それは素人には結構近寄り難いところはあるけど…

資料集だけど、読み物としてもおもしろい

本書はその資料の豊富さから「資料集」としての読み方、使い方が妥当なのかも知れない。
しかし、歴代の政府がどのようなロジックで合憲・違憲判断をし、そのときどきの現実の政治状況とどう整合性を取ろうとしてきたのか、それを探る読み物としても非常におもしろく読める本だ。

筆者は「これまでの政府の憲法解釈について、極力無色透明な立場で、その論理の流れやよりどころを紹介することを主眼とした」(はしがき、p. ⅱ)とする一方、9条に関してはいままでの政府解釈が正当であるとの立場を取っている。
本書は憲法解釈について中立な資料集とすることは出来ない。しかし豊富な資料をもとに読者自身が憲法解釈について考えるための、よいパートナーになってくれる。

憲法記念日は終わりそうだけど、GWに一読いかが?


政府の憲法解釈

政府の憲法解釈


※「自衛権」についての資料的読み物としては以下のものがある。博士論文を元にした学術書で簡単に読めるモノではないけど、「自衛権」概念のかかえる複雑さがよくわかる。

【読書】自衛権、この複雑なるもの/森肇志 『自衛権の基層 国連憲章に至る歴史的展開』 - 準備運動 -just warming up-【読書】自衛権、この複雑なるもの/森肇志 『自衛権の基層 国連憲章に至る歴史的展開』 - 準備運動 -just warming up-

集団的自衛権入門の次に読んだ。2013^...