【読んだ】普通の読書術本/『コンサルタントの読書術』

ザックリ言おう。

本書は極めてふつうの「読書術本」だ。「限られた時間の中で以下に効率よく本から情報を取り出して、そして行動につなげていけるか」という目的を達成するための、読書術本だ。それ以上でもそれ以下でもない。

コンサルタントの読書術 確実に成果につながる戦略的読書のススメ

コンサルタントの読書術 確実に成果につながる戦略的読書のススメ


極めて明確な目的意識を持った時の読書術

著者の大石氏は(元?)コンサルタントであり、その経験から本書が書かれているので「コンサルタントの」という書名になっている。

本書の中であげられているコンサルタントの特徴としては

  • 全体を俯瞰し、狙いを絞って集中してコトを掘り下げる、選択と集中
  • 仮説検証型

などがある。すなわち「コンサルの読書」とは

  • 読む目的を極めて明確化し
  • その目的にかなった本を選択し
  • 考えながら読み、読むと同時にアウトプットする

ことであるという。
つまり、あれについて知りたい!これを身につけるぞ!という目的が明確な場合に、読書の効用を最大化する方法論が「コンサルの読書術」だ。

いくつかのテクニックは参考になる

内容はオーソドックスな読書術本なのだけれど、いくつかのテクニックは(ほかの読書術本の焼き直しといえばそうなのだが)参考になる。
たとえば「雲雨傘」の考え方だ。

「空、雨、傘」のフレームワーク (1/2) - Business Media 誠

「雲が出ている」というのは事実、「雨が降りそうだ」というのは事実からの推測・意見、そして「傘を持っていく」というのはその意見に基づいた行動・提案、となる。
すなわち本を読む際、ある記述が「雲雨傘」のどれにあたるのかを考えておくことが重要、ということだ。

本の著者がある主張をしたとしよう。「雲」にあたる事実関係は自分も共有した。でもなにかひっかかる。そんなとき、引っかかるポイントとは「雨」なのか「傘」なのか。すなわち事実関係から導き出される意見に反対なのか、意見には賛同するけど、それへの対応策に反感があるのか、そして反感があるならより適切な対応策とはなんなのか・・・。

こうしたことを常に考えながら読むことで「頭がよくなる」と筆者は言う。


あとは、「アウトプットをあらかじめ設定する」という方法。
これは本から何を成果として取り出すか、を読む前に明確にしておく方法だ。筆者はこれを「フレームワーク」と読んでいる。その本を読んでなにか発表するとすれば、どのような構成で発表をするかをあらかじめ組み立て、そこにはまるような情報を本から探していくというやり方だ。

このアウトプットをあらかじめ設定するという方法は新しいように見える。しかし、たとえばアドラーの『本を読む本 (講談社学術文庫)』で紹介される「分析読書」(概略をつかみ、解釈し、批評する)のような読書テクニックも、どうようにフレームワークとなりえる。いわば、かなりオーソドックスな読書術を、「仕事に役立ちそう」なシチュエーションと言葉づかいで紹介なおしたようなモノだと感じる。

状況に応じて速読と精読を使い分ける、その練習に

本書では、速読か精読か、という二者択一ではなく、その部分が重要かそうでないかで読み方を変えることを推奨している。そして、本書はその練習にぴったりだ。

上にあげたようなテクニックのうち、役立ちそうな部分があればちょっとじっくり読んでみるといい。そして、それ以外はどんどん飛ばして差し支えない本だ。なぜなら本書は、『本を読む本 (講談社学術文庫)』あたりを読めばもっとくわしくかつ丁寧に書かれてある読書テクニック(の一部)を、コンサルコンサルと連発しながらビジネス書っぽくアレンジした、軽い本だからだ。


最後に一言。本書『コンサルタントの読書術』は非常に優れた、軽い(飛ばし読みOK)本だと思う。別に「コンサルだってよ!っけ!!」などとバカにするつもりは毛頭ない。別にじっくり読むべき本だけが価値ある本ではないし、飛ばし読みで十分な本から得るモノがないわけじゃない。

すぐに意識できそうな読書tipsを、さらっとなぞれるという点で本書は優れているし、ビジネス書特有の「よーし俺も明日から実践しちゃうぞ!」という気持ちの盛り上げ効果も期待できる。

Kindleでのながら読書にオススメ。


コンサルタントの読書術 確実に成果につながる戦略的読書のススメ

コンサルタントの読書術 確実に成果につながる戦略的読書のススメ

本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)

  • 作者: J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山滋比古,槇未知子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/10/09
  • メディア: 文庫
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