99.9%と0.1%を探して、神保町に行く
もうだいぶ前になりますが下記のブログエントリを読みました。
このエントリはチェコ好きさん(id:aniram-czech)*1が、「好き」「嫌い」を超えた「審美眼を大切にする」という芸術鑑賞法についてかかれたものです。
エントリの本筋とはあまり(全然?)関係ないのですが、以下の部分を読んで(芸術ではなく)読書・探書について思ったことがあるので今日はその話をしたいと思います。
以下の部分とはこれです。
いいですか、人生における美術館めぐり、遺跡巡り、読書などの99.9%は無駄骨です。でも、残りの0.1%のために、あなたはこの世界を目を凝らして見つめる必要があります。美術館や映画館に行き、小説を読む必要があります。少々根気がいるでしょう。しかし、「あなたのためだけに作られた作品」は、この世界に必ずあります。どうか生涯をかけて、死ぬまでにそれを見つけ出してください。世界のどこかで、その作品はあなたのことをじっと待っています。
「好き」「嫌い」をこえた芸術鑑賞法があるとしたら - (チェコ好き)の日記
読書の99.9%は無駄骨と言い切り、しかしそれでも残り0.1%のために世界に目を凝らす必要があると説く。ハッとさせられつつも、希望がわいてきそうなそんな文章です。
そして先日東京・神保町に行った時、同じようにハッとさせられつつも、希望がわいてきたことを思い出しました。
神保町へ行こう
私は本を読むのが好きです。そして外に出ること、人混みのなかに飛び込んでいくことが、比較的苦手です。そうするとどうなるか、自分の時間の多くを、自分の部屋で本を読むことに費やします。読む本が手もとになくなったときは、比較的人が少ない時間帯に本屋に行きささっと棚を眺めて欲しい本を買うことになります。
これでも十分楽しいです。ひとりで黙って本を読んでいるだけですが、私は楽しいなあと思いながら過ごしています。しかしだんだん、気分が乗らなくなってくるのです。なんというか、読んでいる本のおもしろさが感じられなくなってくるのです。自分が何で本を読んでいるのか分からなくなってくるというか、視野が狭まってくる恐ろしさを感じるというか。とにかく、狭い自室の少ない蔵書のなかにいるのが耐えられなくなるときが来ます。
そういうときはちょっと脚を伸ばして大型書店に行くと、すこしすっきりします(混んでいてもこのときは我慢します)。おそらく、広い空間にたくさんの本があるのをみると、自分の可能性すら広がったような感覚になるからだと思っています*2。
さて、この「大型書店来訪によるうんざり気分発散法」をより発展させるため、先日東京の神保町に行ってきました。働き始めてからなかなか神保町まで遠出する機会がなく、久しぶりの上陸です。
神保町といえば世界最大級の古書店街です。さまざまなジャンルを扱った数多の古書店があり、同時にいくつかのカラーの違う新刊大型書店が存在し、しかもカレー屋さんや喫茶店などが充実している、訪れて楽しい街です。そんな神保町を、一日かけて練り歩いてきました。
その結果、自宅近くの大型書店に行ったときとは比べものにならないほどのエネルギーがわき上がってくるのを感じたのです。
なんでしょうか、無限とも思える、しかも自宅近くの新刊書店には絶対おかれていないであろう種類の本が、自分の目の前にある。こんな世界があるのか!世界はこんなに広かったのか*3!という衝撃。世の中にはこんなおもしろい本があるのか!という感動。そして神保町特有の「本を読みたくさせる雰囲気」を胸一杯に吸いこむと、すぐさま本を取り出して、その場で読みふけりたくなりました。
99.9%も0.1%もそこにある!という感覚
神保町で私が感じた衝撃と感動はひとことでいえば、99.9%も、0.1%もそこにあるんだ!0.1%を探す自分を受け入れてもらえるんだ!という安心感なのではないかと思いました。
たとえ読書の99.9%が無駄骨であっても、0.1%の「自分だけの本」があるのであれば、それは素晴らしいことだと、そしてそれを探すことも素晴らしいことだと思います(思いたいです)。先に自室にこもって本を読んでいると気分が乗らなくなってくると書きました、それは「ここで本を読んでいるだけでは0.1%に出会えっこない」というような不安を感じるからではないかと思います。
神保町に行くと、今の自分の尺度からすれば無限とも思えるような、しかも自分が観たこともないような本が並んでいます。そうするとこういう気分になります、ここにある本の99.9%は自分が読まない・読めない本かも知れない、でもここになら自分のための0.1%の本があるんじゃないか、いやきっとあるはずだ!と。そして先に書いた神保町特有の「本を読みたくさせる雰囲気」によって、その0.1%を追い求め続けていいんだ、その一見無駄に見える探書・読書はすばらしいんだ、と自分を肯定されたような気持ちにすらなります。
非常に大げさな言葉を使えば、99.9%も0.1%もある神保町に、世界に抱きしめられているような、そんな気分になります。だから、神保町に行くとやすらかになり、しかし希望やエネルギーもわいてくるのではないでしょうか。
また行こう、神保町
今回は学生時代以来、数年ぶりの神保町上陸でした。久しぶりであったために、上記のような感動や衝撃を感じたのかも知れません。
神保町に通い慣れた方々からすれば私はおそらく「神保町の歩き方を知らない初心者」でしかないでしょうし、神保町について全然分かっていない人間でしょう。それでも、今後神保町をよりよく知っていったとしても、今回感じた感動や衝撃は、形を変えつつも感じ続けられるんじゃないかと思います。
こういった気分をまた味わうために、ちょくちょく神保町には行きたいと思います(時間かかるけど・・・)。
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