【読んだ:2015-1】紙の向こうにいる人に、であう/『紙つなげ』

この本を読んで、また知らない人に出会うことができました。


紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている



エンジェルフライト 国際霊柩送還士がちょっと話題になった(ちょっととは失礼か!)佐々涼子さんの新刊というわけで、書店でも目立つ場所に平積みされていた本書、遅ればせながら手に取りました。そして、一気に読んでしまいました。

2011年3月11日の東日本大震災で、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、大変な被害をこうむった。
工場に勤務する社員は大きなダメージを受けながらも懸命に復興をめざし、奇跡とも言える早さで「8号」と呼ばれる製紙マシンを動かすことに成功する。
また、近年急速に力をつけた日本製紙石巻野球チームもまた、震災でチーム解体の危機に見舞われながらも復活を果たし、都市対抗野球出場までこぎ着ける。

本書は日本製紙石巻工場とその野球チーム復活の物語です。
決してキレイな話だけではありません。読んでいるだけで辛く苦しくなるような物語もたくさんあります。そんな物語が丁寧かつ、非常に読みやすく紡がれています*1



震災からの復活、というストーリーはすごく感動的です、しかし私が本書を読んでもっともよかったなぁと思ったのは、「紙をつくる人と出会えた」という感覚を持つことができた点です。

どういうことかというと、私はこれまで、本に使われている紙が、どこでどうやってだれに作られているかなんて考えたこともありませんでした。本好きだなんていっていても、その本を構成する最も重要なものである紙について、大して関心を払ってきませんでした。そして、そんな人は決して少なくないはずです。

震災の直後、紙不足が心配されるなか、佐々さんが連載していた雑誌の編集者はこう言ったそうです。

「これだけ紙を使って商売しているのに、不足してみないと、何も知らないことにすら気づけないなんてね。『電子書籍じゃなくてやっぱり紙だよね』なんて偉そうなこと言っていても、どこで作られているか知らないんだもの」
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている, p. 7)


本が好きだ!なんていいながら、いつも向き合っている紙の向こうにいる人たちに気づけなかった。
しかし本書を読むと、その紙の向こうにいる人たちに出会うことができる。職人としての誇りを持ち、紙を届けなければという使命感に燃え、そして紙をつながなければという熱い想いを持った人たちに出会うことができる。



本を開いて出会うことができるのは、著者だけじゃない。これからは、紙をつなぐ人たちとも出会うことができる。

そう思ったら、また本を読むのが、楽しみになりました。

紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている

*1:悪くいえば「あっさりしすぎた」文体なのかも。佐々さんの本ははじめて読んだのだけれどちょっと好みがでそう。