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【読んだ:2015-2】イメージが大事なんです/『図書館で調べる』

本書のプロローグではこんな問いかけがなされます。

はたして、今の時代に図書館は必要なのでしょうか
(p. 5)

この疑問に対してそれほど熱烈に「必要だ!!」と主張するよりも、レファレンスサービスの技法を利用した調べ方を紹介することで、「図書館使うとこんなことができるよ」と図書館の可能性を示そうとしているのが本書です。

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)


そこで本エントリでは、私が本書を読んで感じた図書館の必要性、有用性について書きたいと思います。


私は本書を読んで、図書館の空間的・機能的な制限、その型にはめてる感、そういうものが時として図書館の強みになるのかな、と思いました。


たとえば本書のなかで、調べ物をする際に使えそうだなあと思った技法が2つありました。それは1)書架の並びを利用した方法、2)分野を超えてイメージする方法、の2つ。どちらも非常に基本的なことなのですが、実際にできているかというと、そうではない人が多いのではないでしょうか。

1)はどういうことかというと、図書館の本はあるルールに則って並べられています。多くの図書館が採用しているのが日本十進分類法です。

日本十進分類法(NDC)9版 2次区分表 - CyberLibrarian

要は分野ごとに並んでるってだけでしょ?
はい、そうです。でも私が「おっ」と思ったのは「0」がつく区分についてです。

たとえば医学・薬学の番号は「49」で、さらに細かく分けようとすれば「493」が内科、「494」が外科、「499」が薬学となります。図書館の棚を左から右に見ていけば、何となく関連が深い分野が続くので、それほど本探しに苦労することはありません。では、薬学の本は「499」の棚を見ていればいいのか、というと、そうとも限りません。

「内科と薬学」というテーマの本があったとします。この本は493におかれるのか、499におかれるのか。こうした分野横断的なものや、総合的なテーマの本は49のはじめに「490.医学一般」として置かれることがあります。

この場合499の薬学と490は位置的に結構離れています。この「0」がつく総合/一般的な分類を分かっていなければ、必要な資料を見落としてしまう可能性もあります。


2)についてです。
図書館で資料を探す際には、自分が探している資料が、どのような分類に置かれているのかイメージすることが大切であると書かれています。

本書で挙げられている例でいえば、修学旅行の行き先が沖縄になり、沖縄について事前学習として調べることになったとします。沖縄の本がどの分類に置かれていると考えるべきでしょうか。

実はすべての分類に、置かれていると考えることができます。

[0]にある百科事典には沖縄に関する項目がたくさん載っています。[1]には沖縄の思想や宗教について。[3]には沖縄の経済、社会問題民俗学など。[4]は沖縄の自然や動植物で、[49]の医学には長寿に関する本もあるかもしれません。[5]には特色ある建築、各種の工業、沖縄料理の作り方なら[59](家政学)です。[6]は、農業、畜産物、水産業から観光まで幅広く関係していそうです。[7]だったら伝統的な舞踊や音楽、マリンスポーツなどの本もあります。[8]は沖縄の言葉。[9]には沖縄の文字だけでなく、沖縄を題材にした作品も多数あるでしょう。
(pp. 29-30)

どうでしょう。「沖縄」というキーワードから、図書館の全分類に関するトピックスを想起することができます。

こうしたイメージをぽんぽんだすには、訓練が必要でしょう。しかし図書館の分類は、そのイメージの手助けになるのではないでしょうか。

まとめ

上で見たとおり、図書館をうまく利用するためには「イメージすること」がひとつ大切な要素になってきます。調べたいものが決まっていたとしても(たとえば「薬学」について)、それがある分類の箇所だけではなく、より一般的な分類の箇所にあるかもしれないとイメージすること。また、「沖縄」という大雑把なキーワードから、調べポイントを浮かび上がらせるためにイメージすること・・・。

そのイメージが難しいんじゃないか、といえばその通りです。しかし、図書館という限られた空間、限られた分類(日本十進分類法なら9つ)は、そのイメージの力を最大限に発揮させるきっかけになると思いました*1

ネットの検索窓に「沖縄」といれればそれこそ無限のページがヒットします。しかしそれではどのような視点で、何から手を付けていいか分からなくなるでしょう。情報過多の現代において何かを調べるということは、どれが不要な情報かを判断することと等しくなります。

図書館は近年インターネット等々の導入によって、それこそあらゆる情報を検索できる場所になりつつあります。と同時に書架の並べ方などによってその情報を一定の規則や型に(むりやり)はめ込もうとしています。この制限によって、この制限こそが、時に私たちの考えなければならない範囲をいい具合に限定し、イメージを最大化してくれるのかも知れません。

むすび

図書館はいろいろな使い方ができるのかも知れないなあと思いました。
ありとあらゆる情報を検索できる場所として。または情報が整理された空間として。

そのどちらのニーズも満たさんとする、懐の深さが図書館の魅力かも知れません。


なお本書と同じ著者の『図書館が教えてくれた発想法』もおすすめです。取り上げている内容は本書とかぶるところが多いですが、『図書館が教えてくれた発想法』は小説のような書き方になっていて新米アルバイト図書館員の成長ぶりを読みつつ、調べ方の基本を疑似学習できる本です。

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)』を読んで図書館に行きたくなったところで、『図書館が教えてくれた発想法』を持って実地学習、というのが私のオススメコースです!



図書館で調べる (ちくまプリマー新書)

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)


図書館が教えてくれた発想法

図書館が教えてくれた発想法


不良のための読書術 (ちくま文庫)

不良のための読書術 (ちくま文庫)

*1:図書館の分類法法は時につまらないといわれますが(たとえば『不良のための読書術 (ちくま文庫)』、p. 189とか)、そのつまらなさと堅さが、武器になることもあるのだなあと思います