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【読んだ:2015-5】最後の寄稿文に心震える/『本屋会議』

町の本屋さんは危機的状況にあります。出版不況といわれるなか本が売れず、閉店する本屋さんが跡を絶ちません。
それでも本屋さんを何とか残そう、何とか発展させていこうとする人たちも大勢います。なぜそんなに必死になるのでしょうか、そもそも町の本屋さんの魅力となんなのでしょうか。


本屋会議

本屋会議

ライターの空犬太郎氏と夏葉社・代表の島田潤一郎氏がはじめた「町には本屋さんが必要です会議」は、2014年1月から1年間かけて全国の書店をまわり、いろいろな本屋人を招き「会議」を開催してきました。本書はその記録であり、その会議のなかからあふれてきた本屋人たちの想いのかたまりです。

出版不況のなかで頑張る本屋さんたち・・・一言でまとめてしまえばそういう本です。島田氏も「本書のなかには、具体的な打開策もほとんど出てこない」(p. 5)と断言します。それでもその想いを感じるだけでも価値はありますし、後述しますがなにより最後の中学生の寄稿だけは、みんなに読んでほしいのです!!!

どうする?!町の本屋さん

2013年に神戸の名店・海文堂書店が閉店しました。いい立地にあり、いい本をそろえ、いい店員がいる、他の本屋さんからしたらうらやましい条件が揃った本屋が閉店してしまった、その衝撃はどれほどものもだったのでしょうか。もう、ただ単に本を売るだけでは、やっていけない時代のようです。

こうした時代において、たとえば広島の「ウィー東城店」では本屋のなかにカフェがあり美容院があり、化粧品が売っています。千駄木の往来堂書店は「文脈棚」でその名が全国区になりましたね。下北沢のB&Bはビールを飲みながら本を選ぶことができるし、毎日何かしらのイベントが行われています。(代官山などの)蔦谷書店はシャレオツな雰囲気で、気になった本を片手に併設カフェで読書、なんてのもヨサゲな休日名過ごし方ですね・・・。

今や本屋はこうした「ちょっと変わったこと」をしないと、生き残れなくなってしまったと思えてしまいます。
それでも『本屋会議』のなかには、自分が置きたい本ではなく、町の人たちがもとめる本を並べなきゃいけない、という本屋さん、本屋が独自色を出すことが、お客さんにとっては使いづらさ②なるのではないかと考える本屋さんなどが登場します。
変わったことをすればいいのではなく、一部の本好きだけが喜ぶ店作りをするのではなく、その本屋さんがある、その場所に応じた、いろいろなやり方があるんだよ、と気づかせてくれます。

ここだけは読んでほしい!

本書に書かれている「本屋さんの話」が多くの人にとってどれほどおもしろいものなのか、私はよく分かりません(私は本屋さん論などに興味があるので楽しいのですが・・・)。最初に書いたとおり、本書を読んでも本屋さんの未来について「解決策」は出てこないかも知れませんし。

それでも、それでも!ここだけは多くの人たちに読んでほしい!というところがあります。
それが、本書の最後に書かれている(当時)中学生の為石夢実さんの寄稿文です。

大の本好きの為石さんは、中学校に入学すると図書委員になり、誰にも利用されず寂れかけていた図書室を再生させようと奮闘します。担当の先生の協力や、職業体験にいった「ウィー東城店」の店長に支えられ、影響を受けながら、本が大好き!本を読むって楽しい!という気持ちを育て、それを図書室の充実や図書室通信などを通してみんなに伝えようとします。そんな中学3年間の軌跡、想いが綴られています。

「本が好き」っていうだけで、世界が広がることもあるんだ。図書委員長をやっていることも自分の特徴としていいんだ

この文章を書いた今、そう実感しています。
本屋会議、p.232)

なんというかこの文章この一文は、本好きへの最大限の肯定表現だと私には思えます。為石さんの文章を読んでいると、本好きな人は本を通じて得られる喜びや楽しみを思い出させてくれるし、あまり本を読まない人にはこれから得られるであろう喜びや楽しみへの期待がふくらませてくれます(たぶん)。

本が好きで、そのすばらしさを他の人にも伝えようとする。彼女は立派な「本屋」だと、しかもかなりの「名本屋」だと思いました。


筆者の一人である空犬太郎氏もブログで、

当方の担当した駄文はともかく、この為石夢実さんの文章だけは、本を愛する人、本屋を愛する人にできるだけ多く読まれるといいのになあ、と思っています。島田さんとはそのような相談はしていないのですが、この文章だけでも、公開したいぐらいです。ぜひぜひ、立ち読みでもかまいませんので、読んでみてください
空犬通信 2015年01月05日

と書いているくらいです。まったく同感。本を愛する人も、そんなに愛していない人も立ち読みでもいいので読んでほしい!いやでもやっぱり、買って読むのがイイと思うよ!


本屋会議

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本屋図鑑

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