【読書】『近代美術の巨匠たち』
読んだ。感じたことは、「1冊目ではない」ということ。
人物に焦点を当てた読み物
本書は近代美術史の巨匠13人を取り上げ、その人物にまつわるエピソードをたっぷり盛り込み、人間的内面を描き出そうとしたものだ。高階氏のわかりやすく明快な語り口は
名画を見る眼 (岩波新書)や近代絵画史―ゴヤからモンドリアンまで (上) (中公新書 (385))とかわらないが、この2冊と本書が大きく違う点は、前の2冊(下巻も入れれば4冊だが)が近代絵画の「歴史」に焦点を当て、さまざまな絵画がなぜ生まれてきたのかを解説したものであった一方、本書はその絵画を生み出した「人物」に焦点を当て、いわゆる理論や主義、絵画テクニックというものはほとんど触れられていない、というところだ。
2冊目以降に
上のような事情があるので、本書は近代絵画、近代絵画史について多少勉強した後のほうが、一段と楽しめる内容になっている。
「あぁこういった歴史的背景によって描かれたあの絵画の作者は、こういう人間だったんだなあ。この人のこういった人間的側面が、あの絵画のあんな部分やこんな部分に影響を与えているのかなあ」
といった具合に。
私も高階氏の本を数冊読んでつまみぐいの知識を持った上で読んだとはいえ、もうちょっと後になって読んでもよかったかも、と思える本だった。