【読書】山本雅人(2009)『天皇陛下の全仕事』、講談社現代新書

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読んだ。

天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)

天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)

本書は、「天皇」がいつ、どこで、どのような仕事をどのくらい行っているのかを具体的に明らかにしよう、と書かれたものである(p. 3)

とあるとおり、信任状捧呈式からはじまり国事行為はもちろん公的行為、私的行為などを次々と紹介していく。加えてその間に天皇や皇族の住まいやお財布事情、宮内庁組織や皇族儀式についても触れられる。新書としては分厚い364ページの本である。

私個人としては天皇や皇室に特別な敬愛をよせているわけではないし、むしろ天皇制という制度自体にはどちらかというとネガティブな感情を持っている。それでも、なんとなくネガティブな感情を持っている対象について知っておく必要もあるしなぁと思って手に取った本書だが、知らないことが多かったこともあり興味深く読めた*1

本書を読んで思ったことは「天皇も大変だなぁ」ということ。
常に周りに人がいて、存命中は退位することができない。日本国憲法で保障されているはずの職業選択の自由が、ここまであからさまに制限されている人は天皇だけなのではないか。
また、決裁などの業務はほかの皇族に簡単に委任することができず、静養中であっても特定の曜日には書類が運ばれてくるという。式典出席などは土日に重なることも多く、休日出勤が多い。また、天皇といえども祭祀関係者を雇用する資金は内廷費という天皇家の私的費用から捻出する必要があり、思ったほど裕福な暮らしではない・・・などなど。


学校の教科書には、天皇は象徴です、国事行為します、くらいな簡単な紹介しかないが、本書を読むと天皇の仕事の多様さがよくわかるし、またその多様な仕事のそれぞれが程度は違えど重要な意味あいを持っていることがわかる。

そう考えると、やはり日本という国は「天皇制」の国なのかぁと感じてしまう。

*1:ただ、364ページに「天皇陛下の全仕事」についての淡々とした記述が続くので、読み続けるのは結構しんどい。ぱらぱらと速読しながら気になるところが目についたらじっくり読む、というスタイルがもっとも適合する部類の本だ