【読んだ】自分のキモチ、伝えたい・・・/『語感トレーニング』・『日本語の「語感」練習帖』
さて問題です。
「快調」・「好調」・「順調」、最も調子がいいのはどれでしょう。
意味はだいたい一緒、でも明らかに違う。耳あたりというか、語の肌触りというか・・・そういった、微妙な(時には明確な)違いを意識することで我々は、自らの思いを寄り適切に相手に届けたり、時には語の使い方を誤り、discommunicationを起こしたりする。
今回まず紹介するのは、こちら。
語感トレーニング――日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)
- 作者: 中村明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/04/21
- メディア: 新書
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語感を鍛えるために
我々表現者は2つの方向から最適な言葉に迫る。ひとつは「意味」、もうひとつは「語感」だ。「意味」とはその後が何を指し示すかという情報を伝えるハード面であり、「語感」とはその後があいてにどういう感触・印象・雰囲気を与えるかといったソフト面を指す(語感トレーニング――日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)、p. ⅶ)。
本書、語感トレーニング――日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)は、自分の思いを伝える際に最も適切な表現を選択できるようになるためのトレーニング本だ。
三部構成になっていて
- 表現する《人》に関する語感:たとえば、「新婚旅行」を「ハネムーン」といった、使ったひとがどんな人(どんな年代の人)か想像がつくことば。
- 表現される《もの・こと》にかかわる語感:たとえば、「ご飯」・「ライス」・「めし」と指す対象が違って感じられることば。
- 表現に用いる《ことば》にまつわる語感:たとえば、同じ早朝でも「朝」というか「あかつき」というか「明け方」というか、ある感覚がまとわりついたことば。
の三つだ(これらは重なり合う部分もあると思うが)。三部構成のなかもこまかくテーマに別れ、一つのテーマにQuestionがひとつ、計55題の問題集となっている。
本書はその問題を解いていくことでだんだんと語感を感じ分け、使い分ける能力がぐんと上がる!といった類いの本ではない。しかし55題を読み通せば、本書で紹介された語感は知識となり、日本語の語感について意識が高まることは確かだ。語感を使いこなし読みこなすには場数を踏み、失敗を重ね、試行錯誤していくしかないのだろう*1。
本書は「語感実践使いこなしトレーニング本」ではなく、「語感意識付け入門本」として読むべきだろう。
実践的な「語感トレーニング」したいひとはこちら
語感を鍛えるには時間がかかるだろう。といっても、日常生活でとりあえず役に立ちそうな語感にまつわるあれこれを、知識としておさえておきたい!という人には『日本語の「語感」練習帖』がオススメ。
『語感トレーニング』は文学作品からの引用がほとんどだが、『練習帖』はその例文のほとんどが会話場面。テーマもいくつか紹介すると、
- 謝罪のことばも一歩まちがえると大ごとに
- 上司の心情を悪くせずに休暇を願い出るには
- やってくれると期待できる「かしこまりました」
などなど、「仕事でつかえる」語感の話が盛りだくさんだ。
『語感トレーニング』にくらべてちょっと「正しい日本語」ライクでお説教臭さが増すけれど、「語感」は人間関係を円滑にするテクニックになりうることがわかる一冊。
語感トレーニング――日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)
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- 作者: 中村明
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*1:語感は対話者、コンテクスト、時代によってもどんどん変りうる