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【読んだ】描ききれない感が醸し出す怖さ/『日本の公安警察』

青木さんのちょっと前の本を読む。

日本の公安警察 (講談社現代新書)

日本の公安警察 (講談社現代新書)


青木理さんの『絞首刑』『トラオ』などが非常におもしろかったので、少し前の著作にも手を出した。

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新書としてはやや厚めの262ページ、日本の公安警察の実態を描き出そうとした本だ。
公安事件の捜査や公安情報の収集に当たっている部門を本書では公安警察としてその組織の歴史、取り組んだ事件、現状に資料や証言から迫る。

戦前の中央集権的な警察制度は敗戦によって解体されるかと思われたが、戦後の「逆コース」のなかで再び中央集権的な組織として復活する。そのなかで共産主義・右翼過激派などを監視・取り締まりをする公安警察は、非常に多くのヒト・カネをあつめ、肥大化していく。時に刑事警察部門と衝突しながら、ときに非合法的な捜査手法を駆使しながら・・・。

左右両派の過激派が目立たなくなった今日、公安機関はその存在意義を過剰な国民監視に見出そうとしているのではないか。著者はそんな懸念を示す。そして全国の道路に張り巡らされたNシステムなどの「監視装置」。本書の中で明らかにされる公安警察の非合法的な捜査手法、お粗末な情報漏洩などからみれば「信用ならぬ機関」である公安警察が、犯罪捜査や抑止を名目にこれらの監視装置を持つことが、どれだけ恐ろしいことか・・・。

描ききれない感が怖い

前述の通り、本書は公安警察の実態を描こうとしているのだと思う。しかし、どうもうまくいっていないようなのだ。
なぜそのような感想を持つかというと、本書が公安警察の歴史、組織概略、個々の活動事例を紹介するものの、そのどれもがどうも中途半端、概略で終わってしまっているように感じられるからだ。

組織の概略についても少し調べればわかるようなところまでしか書かれていない。個々の活動事例も、詳細に書かれてはいるものの、そこから公安警察の実態、あり方について考察が広がっていくわけではない。
また、使用している資料の曖昧さもその一因だろう。手元にある「極秘資料」や「内部資料」の紹介や、「関係者」の証言などが資料として多く引用されるが、どうも出典がわかりづらい。ゆえに、資料の信憑性が読者にとって測りづらい。
これ、取材しないで書いただろうというネット記事のような不快感も時に感じたほど。


なんというか、どうも公安警察という本書のテーマを、描ききれていないのだ
そして、その描ききれていない感が、怖い。


もし青木さんが本書で公安警察について非常に精緻な記述をして「公安警察を知るにはこれがいいな!」という本になってしまっていたらよかったのだろう。公安警察は一人の優秀なジャーナリストによって描き出されるレベルの組織だと思えたのだろう。

しかしそうではなかった。青木さんがなんとかその実態に迫ろうとした公安警察は、本書の中でどうもつかみどころのない組織として感じられる。いや、つかみどころのないというよりは、迫れば迫るほどその闇に吸い込まれそうな、ブラックホールのような組織だと感じられる。

公安警察の巨大さ、秘密性がとても怖い。

日本の公安警察 (講談社現代新書)

日本の公安警察 (講談社現代新書)