紙まなべ!児童書からも学べ!

知らない分野の学びはじめに、児童書って使えるなあとあらためて思ったという話をします。


先日『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』を読んで、いかに自分が紙について知らないかを痛感しました。本好きなどと言っていながら、その本を構成する最重要物質である紙に全然関心をもってこなかった。その衝撃と反省から、紙について少し勉強してみることにしました。

まずは百科事典で調べる

調べ物の基本、まずは百科事典をいくつか引いてみます。百科事典だけでもかなり多くの情報を得ることができました。
紙は紀元前の中国で発明され、蔡倫が発展させ、タラス河畔の戦いでイスラム世界に伝播し、欧州にて機械漉きが開発されたこと。紙とは植物等の繊維をとりだし、それを水中で分散させ、漉いたものであること。昔はボロなどが原料になっていたが、現在は木材パルプが主要原料であること。産業革命期に欧州で機械化と大量生産が確立されていった一方、和紙は手漉きが基本であること・・・等々。

百科事典を引きながら新たなキーワードを見つけ、最終的に「紙」、「パルプ」、「製紙」、「和紙」といったキーワードを引き比べてみました。

次は書籍で

紙についての概略を知ったところで、紙についての基本書を数冊読んでみることにしました。
日本十進分類法の585が「パルプ・製紙工業」なので、その棚を眺めて、基本書をいくつかピックアップした。たとえば以下のような本です。

紙のなんでも小事典―パピルスからステンレス紙まで (ブルーバックス)

紙のなんでも小事典―パピルスからステンレス紙まで (ブルーバックス)


紙の科学 (B&Tブックス―おもしろサイエンス)

紙の科学 (B&Tブックス―おもしろサイエンス)


紙の知識100

紙の知識100


ささっと読んでみると、入門書といえども結構詳しく書かれていることが分かります。
たとえば、紙とは「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの。なお、広義には、素材として合成高分子物質を用いて製造した合成紙の他、繊維状無機材料を配合した紙も含む」(『紙のなんでも小事典』、p. 40)とされているが、その膠着とは繊維が絡み合うというよりは、パルプの原料であるセルロースの分子構造がうんちゃらかんちゃら・・・といった説明がきちんとなされています。

きちんとなされているのはいいのですが、私のような化学知識がぱっぱらぱーの人間にとっては、難しさも感じます。
しかも「一般の人にもわかりやすく書きました」と言いながら、これ専門用語だろうというような言葉が数多くあったり、製紙機械を紹介するにもイラストや写真が少なかったり、また紙の原料となる植物の名前が読めなかったり(楮:こうぞ、三椏:みつまた、とかフリガナないと厳しいっす・・・)、余計に難しさ、取っつきにくさを感じてしまいました。

そこで児童書ですよ!

困った私は、児童書に手を出しました。百科事典引いたあとに、児童書に当たってみるべきだったのかも知れません。
読んだのはこちら。

「紙」の大研究〈1〉紙の歴史

「紙」の大研究〈1〉紙の歴史

「紙」の大研究〈2〉紙とくらし

「紙」の大研究〈2〉紙とくらし

「紙」の大研究〈3〉紙をつくろう

「紙」の大研究〈3〉紙をつくろう


※このシリーズはもう一冊、「紙」の大研究〈4〉紙の実物図鑑があるのだけれど、これは現時点で手に入れることができませんでした。

この『紙の大研究』シリーズがすごくわかりやすい!豊富なイラスト・写真とわかりやすい記述で紙についての基本事項を説明してくれています。
児童書だからと言って情報量が少ないかというとまったくそんなことはありません。紙の歴史と伝統的な製造法、そして現在の紙の使用状況は、年表や数表を掲載しながら記述されているし、紙の仕組みについてもパルプの製造からサイジングと言った加工段階まで書かれています。紙には縦目・横目があること、そしてそれの試験方法も掲載しています。また、いろいろな植物から紙ができることを示し、その作成方法まで記載があります(草食動物の糞からも紙ができることを紹介しているし、その実験を推奨している!)。
「紙」の大研究〈4〉紙の実物図鑑に至っては紙の実物を触ることができるようですが、入手してからのお楽しみ。


いやぁ、児童書恐るべし。これだけの情報量がわかりやすく書かれているなんて、児童書コーナーにおかれて、子どもたちだけに読ませるのはもったいない!本や図書館を使っての調べ物のコツとして「児童書にあたれ」と書かれていることの意味と重要性を、実感しました。



そして、今回いろいろ調べてみて実感したのは、紙ってすごいなあということ。いろいろな場面で使われて、その場面ごとに異なる機能を付与され発揮する。書籍については電子書籍の台頭もあり、『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』なんて本が話題になってしまうくらいです。しかし、紙はこの先もまだまだ我々の生活になくてはならないものであり続けるだろうし、紙の可能性はまだまだ底知らずなんだなあと思いました。


図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)

【読んだ:2015-1】紙の向こうにいる人に、であう/『紙つなげ』

この本を読んで、また知らない人に出会うことができました。


紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている

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99.9%と0.1%を探して、神保町に行く

もうだいぶ前になりますが下記のブログエントリを読みました。

このエントリはチェコ好きさん(id:aniram-czech*1が、「好き」「嫌い」を超えた「審美眼を大切にする」という芸術鑑賞法についてかかれたものです。

エントリの本筋とはあまり(全然?)関係ないのですが、以下の部分を読んで(芸術ではなく)読書・探書について思ったことがあるので今日はその話をしたいと思います。

以下の部分とはこれです。

いいですか、人生における美術館めぐり、遺跡巡り、読書などの99.9%は無駄骨です。でも、残りの0.1%のために、あなたはこの世界を目を凝らして見つめる必要があります。美術館や映画館に行き、小説を読む必要があります。少々根気がいるでしょう。しかし、「あなたのためだけに作られた作品」は、この世界に必ずあります。どうか生涯をかけて、死ぬまでにそれを見つけ出してください。世界のどこかで、その作品はあなたのことをじっと待っています。
「好き」「嫌い」をこえた芸術鑑賞法があるとしたら - (チェコ好き)の日記

読書の99.9%は無駄骨と言い切り、しかしそれでも残り0.1%のために世界に目を凝らす必要があると説く。ハッとさせられつつも、希望がわいてきそうなそんな文章です。

そして先日東京・神保町に行った時、同じようにハッとさせられつつも、希望がわいてきたことを思い出しました。

神保町へ行こう

私は本を読むのが好きです。そして外に出ること、人混みのなかに飛び込んでいくことが、比較的苦手です。そうするとどうなるか、自分の時間の多くを、自分の部屋で本を読むことに費やします。読む本が手もとになくなったときは、比較的人が少ない時間帯に本屋に行きささっと棚を眺めて欲しい本を買うことになります。

これでも十分楽しいです。ひとりで黙って本を読んでいるだけですが、私は楽しいなあと思いながら過ごしています。しかしだんだん、気分が乗らなくなってくるのです。なんというか、読んでいる本のおもしろさが感じられなくなってくるのです。自分が何で本を読んでいるのか分からなくなってくるというか、視野が狭まってくる恐ろしさを感じるというか。とにかく、狭い自室の少ない蔵書のなかにいるのが耐えられなくなるときが来ます。

そういうときはちょっと脚を伸ばして大型書店に行くと、すこしすっきりします(混んでいてもこのときは我慢します)。おそらく、広い空間にたくさんの本があるのをみると、自分の可能性すら広がったような感覚になるからだと思っています*2

さて、この「大型書店来訪によるうんざり気分発散法」をより発展させるため、先日東京の神保町に行ってきました。働き始めてからなかなか神保町まで遠出する機会がなく、久しぶりの上陸です。

神保町といえば世界最大級の古書店街です。さまざまなジャンルを扱った数多の古書店があり、同時にいくつかのカラーの違う新刊大型書店が存在し、しかもカレー屋さんや喫茶店などが充実している、訪れて楽しい街です。そんな神保町を、一日かけて練り歩いてきました。


その結果、自宅近くの大型書店に行ったときとは比べものにならないほどのエネルギーがわき上がってくるのを感じたのです。
なんでしょうか、無限とも思える、しかも自宅近くの新刊書店には絶対おかれていないであろう種類の本が、自分の目の前にある。こんな世界があるのか!世界はこんなに広かったのか*3!という衝撃。世の中にはこんなおもしろい本があるのか!という感動。そして神保町特有の「本を読みたくさせる雰囲気」を胸一杯に吸いこむと、すぐさま本を取り出して、その場で読みふけりたくなりました。

99.9%も0.1%もそこにある!という感覚

神保町で私が感じた衝撃と感動はひとことでいえば、99.9%も、0.1%もそこにあるんだ!0.1%を探す自分を受け入れてもらえるんだ!という安心感なのではないかと思いました。

たとえ読書の99.9%が無駄骨であっても、0.1%の「自分だけの本」があるのであれば、それは素晴らしいことだと、そしてそれを探すことも素晴らしいことだと思います(思いたいです)。先に自室にこもって本を読んでいると気分が乗らなくなってくると書きました、それは「ここで本を読んでいるだけでは0.1%に出会えっこない」というような不安を感じるからではないかと思います。

神保町に行くと、今の自分の尺度からすれば無限とも思えるような、しかも自分が観たこともないような本が並んでいます。そうするとこういう気分になります、ここにある本の99.9%は自分が読まない・読めない本かも知れない、でもここになら自分のための0.1%の本があるんじゃないか、いやきっとあるはずだ!と。そして先に書いた神保町特有の「本を読みたくさせる雰囲気」によって、その0.1%を追い求め続けていいんだ、その一見無駄に見える探書・読書はすばらしいんだ、と自分を肯定されたような気持ちにすらなります。

非常に大げさな言葉を使えば、99.9%も0.1%もある神保町に、世界に抱きしめられているような、そんな気分になります。だから、神保町に行くとやすらかになり、しかし希望やエネルギーもわいてくるのではないでしょうか。


また行こう、神保町

今回は学生時代以来、数年ぶりの神保町上陸でした。久しぶりであったために、上記のような感動や衝撃を感じたのかも知れません。

神保町に通い慣れた方々からすれば私はおそらく「神保町の歩き方を知らない初心者」でしかないでしょうし、神保町について全然分かっていない人間でしょう。それでも、今後神保町をよりよく知っていったとしても、今回感じた感動や衝撃は、形を変えつつも感じ続けられるんじゃないかと思います。

こういった気分をまた味わうために、ちょくちょく神保町には行きたいと思います(時間かかるけど・・・)。


神保町公式ガイド Vol.5 (メディアパルムック)

神保町公式ガイド Vol.5 (メディアパルムック)


はじめての神保町

はじめての神保町

*1:大好きなブロガーさんのおひとりです

*2:良い勘違いだと思っています

*3:という認識もまた、井の中の蛙的かも知れませんが

2014年振り返り:私はなにを読み、なにを気に入ったのか

2014年はあとちょっとで終わってしまいます。

そこで今回は、本ブログの「読書」カテゴリにあるエントリを掘り起こし、私は今年どんなことが気になって、どんなことにはまったのかをちょっと振り返ってみたいと思います。ブログタイトルが『やすらかLIBRARY』ということもあり*1読書ログが中心の本ブログですので、読んだ本を通して今年を、今年の自分を振り返ってみるというのがよいのではと思いました。

それではいきましょう。

レトリックで震える


【読書】飾りじゃないのよレトリックは/ 『レトリック感覚』・『レトリック認識』 - やすらかLIBRARY

2014年当初はレトリック論にはまっていた感があります。うえのエントリで紹介した本の他にも
【読んだ】自分のキモチ、伝えたい・・・/『語感トレーニング』・『日本語の「語感」練習帖』 - やすらかLIBRARYこれもレトリックに関する本でした。
すなわち、レトリックとは言語使用における「余計なモノ/飾り」ではなく、世界をより正確に認識し切り取るための表現形式なんだ!そのことに気づいたきっかけの本であり、自らの言語使用により意識的になれた本です。

また、ブログで紹介し損ねてしまいましたが、以下の2冊もレトリックを学ぶうえでよい本だと思いました。

日本語のレトリック―文章表現の技法 (岩波ジュニア新書)

レトリックのすすめ


マンガ再発見

私は中学生になって以来、マンガをほとんど読まなくなってしまいました。ところが2014年、なぜかマンガをよく読むようになり、そして今までマンガを読んでこなかったことを後悔するようになりました。
なかでもよかったのは、以下のエントリで紹介した志乃ちゃんは自分の名前が言えないです。


【読んだ】ここにいるのは「私たち」そのものです/『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 - やすらかLIBRARY


吃音の志乃ちゃんが主人公のマンガですが、決して「吃音の少女が頑張る感動物語!」というわけではありません。志乃ちゃんの苦しみや葛藤を描きながらも、誰もが何らかのかたちで持っているコンプレックスの存在、そしてそれを「乗り越える/解決する」のではなく「肯定する/受け入れる」というかたちで表現したマンガだと思います。

また、以下のエントリで紹介した君は淫らな僕の女王 (ヤングジャンプコミックス)もよかったです。


【読んだ】自制心を失った女子高生は、こうなってあんなことしちゃう/『君は淫らな僕の女王』 - やすらかLIBRARY

ちょっと(どころじゃないけど)エッチな内容でこれR指定かけなくていいのか!!と思ってしまうマンガですが、主人公とストーリーのぶっ飛び具合につきあっていると、今年あったイヤなことなんて忘れちゃいます。忘年用マンガとしておすすめします!

アニメという表現手法

マンガと同様、私はアニメも中学生以降まったく観なくなってしまいました。アニメブームなどは自分とは関係ないモノ、アニメとは自分が観るべきモノじゃないとすら思っていました。しかし2014年です。Chromecastを手に入れたこともあり、アニメをよく見るようになりました(といっても本数としてはそんなに多くないのですが・・・)。


アニメーション初心者が気に入った、アニメーション3作品 - やすらかLIBRARY


短編アニメを中心に観ていましたが、新海誠作品がすべて観られる環境にあったため、ひとり新海誠映画祭を開催しました。


【観た・読んだ】私は『秒速5センチメートル』を観て、なぜせつなくなるのか - やすらかLIBRARY


【観た】個人的・観ると、励まされるアニメ/『雲のむこう、約束の場所』 - やすらかLIBRARY


さらには映画「たまこラブストーリー」 [Blu-ray]にドはまりし、Blue-rayが届いた日には手に持って眺めてにやにやしていました。


好きな人ができました - やすらかLIBRARY

『たまこラブストーリー』のBlu-rayが届いた - やすらかLIBRARY


また、アニメを観ているうちに、アニメはどうやって作られているのだろう?という疑問がわいてきました。その疑問に簡潔かつわかりやすく応えてくれたのがこちらの本です。


アニメ制作の現場、お見せします!/『アニメを仕事に!』 - やすらかLIBRARY

アニメ制作の第一線で活躍されている方が書かれているだけあって、現場の空気が伝わってくるような、そんな本でした。


まとめ

こうしてみると2014年はマンガとアニメを再発見したことにより、それらを楽しみ、そして本ブログで紹介することができるようになった一年でした。
前から多く紹介してきた新書やジャーナリストが書いたノンフィクションに加え、読むモノ・観るモノにマンガやアニメが選択肢になることで、私自身の読書や余暇の時間の過ごし方によい変化が出てきたと思っています。
本当はブログにもよい変化が見られますね!とでも書きたいところですが、こちらは相変わらずほそぼそと好きなことを書いているだけですね。



まあそれもよいでしょう、と自分を納得させつつ、2015年も好きな本を読み好きなアニメを観て、それ以外にもたくさんのモノを発見し、楽しみ、このブログで紹介して行けたらなあと思います。


こんなブログでもエントリをあげると読んでくださる方がいらっしゃるようです、本当にありがたいことです。自分の好きなこと書いているだけだからね!といいつつ、読者の方の存在、反応がブログを続けるモチベーションになっています。

みなさま今年も大変お世話になりました、よいお年をお迎えください。






・・・過ぎ去りしクリスマス、私のところにはサンタさんが来ませんでした。 ゆく年くる年2015「貼り付け機能でプレゼントキャンペーン」 に応募するのではてなさんがサンタさん代わりになってくれるといいな。ほしいのはこの本棚。

ルネセイコウ タワーシェルフShateau(シャトー) SHT-130A シルバー

ルネセイコウ タワーシェルフShateau(シャトー) SHT-130A シルバー

ずーっとずーっとほしいといいつづけ、本の片付けをしながらも本棚からあふれ出す本を置く場所の理想型だと思い続けています。積ん読本棚がほしい!


ことおせ!よいおと!!

*1:つい最近ブログエントリを変えたんですがね・・・

アニメ制作の現場、お見せします!/『アニメを仕事に!』

小学生のころを除き、いままでほとんどアニメーションを見たことがなかった。しかし先日Chromecastを手に入れてから、立て続けにアニメを何本か観ている。


Chromecast生活はじめました - やすらか生活への準備運動


私が子どもの頃観ていたアニメといえば、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、名探偵コナン、スラムダンク、赤ずきんチャチャ、セーラームーン*1・・・であって、そのイメージで最近のアニメを観ると、映像に関しては本当にキレイだなあと思う。

そうすると、そもそもアニメってどうやって作っているんだろう?という疑問がわいてきた。いろいろと調べていて、見つけたので即買い、即読みしたのが、本書だ。

アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)

アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)

*1:妹と一緒に見てたなぁ

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